ホームズの依頼人であったヴァイオレットは事件後神戸で遭遇する事件を解決していく。話が展開する中で、ハドソン夫人、グレースなど本編登場人物の過去が徐々に明らかになる。

THE FAR EAST 13
オリエンタルホテル(4)

 舞台での劇は、クライマックスを迎えていた。シャーロック役のマイクロフトも白髪が増え、ユダヤの
年老いた商人がすっかり似合っていた。


シャーロック「もう3000デュカットは返していただかなくとも結構です。それよりも最初の契約どおり、胸の肉1ポンドをいただきましょう。」
裁判官 「まあ、待ちたまえシャーロック、君には慈悲という心がないのか」
シャーロック「裁判官様、私は契約書どおりのことを要求しているだけでございます。」

グルーム氏は、舞台を見ながらウェイターからワインをグラスに受けた。
「うわさでは、日本が買い付けて回航させている軍艦は、ロシアの軍艦がぴったり尾行しているらしいが。」
「まあ、その後ろには、イギリスの軍艦もついていますから大丈夫でしょう。」
「いざ開戦となったら、即座に海上戦に突入するわけだな。」
「まあ、その心配はないでしょうが、日本の軍艦が広島の江田島に入港するまでは、何かと理由をつけて尾行してくるでしょうね。」
「アームストロング社は、イギリス政府とも関係が深い。日本が回航を頼んだのもその辺が大きな理由だ。」
「輸送費がえらく高くつきましたね。」
「いずれ、日本の軍艦もできるようになるさ。日本人は、勤勉で努力家だ。」
「どこか、他の国の人々とは違うものを持っていますね。」
「友人として大切にしなければならないな。」


裁判官「どうしても、胸の肉1ポンドを要求するのだな。」
シャーロック「そのとおりでございます。」
裁判官「仕方ない、そのとおりにしてよろしい、ただし……。」


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